日本では自伝を書く人はまれです。大きな業績を残して社会に貢献した人ほど謙虚な方が多く、年齢が来たら立場を譲って身を引かれることが多いようです。だから自分の親がどんな重要な仕事をしていたか、また人助けをしていたかを、お葬式で初めて知ったという話も時々聞きます。
そういう方のお話こそ文字に残しておけないだろうか。議会の議事録や裁判書類の書き起こしを業務とし、文字に残すことの重要性を知る当社が、長年考え続けてきた思いが、「コトバコ」を生みました。
私たちにとって、どうやってその方々から話を聞き出すかが大きな問題でしたが、ベテラン・アナウンサーの橋本登代子さんに相談したところ、快く賛同していただけました。これまでさまざまな方へのインタビューをされてきたご経験から、言葉を残すことの大切さを、すぐにご理解いただけました。
また、限られた時間に十分な内容を聞き出せるかどうかが心配でしたが、相手を信じて無心でお話を聞けば、いつでも期待以上のお話をいただけるという、心強い言葉で勇気づけられてスタートできました。豊かな経験から生まれた言葉が、どれだけまわりの人間を勇気づけるか。コトバコの持つ意義を、はからずも自分たちが最初に知ることになりました。