話し言葉を聞いて文章に書き起こす、口述筆記は文字の誕生と同時に生まれました。戦国武将の書簡なども何種類かの筆跡が残っていて、口述筆記に本人が花押(書き判)や印鑑を押して送ったと考えられています。西欧でも、古い映画では小説家などの文章の専門家もタイピストに口述筆記させるシーンがよく登場します。文字を書けることと、口述筆記させることには、また別の意味があったようです。
書き直しできない筆や万年筆から、いつでも推敲できるワープロへ、文書作成は誰にでもできる作業になってきました。さらに現代はスマホで録音し、AIで書き起こすことも簡単にできます。そんな時代に口述筆記を行う意味、それは第一にインタビューにあります。
私達の周りを見ても、たあいもないことを楽しく聞かせる人もいれば、大事なことでも説教がましくなってしまう人もいます。どんなに豊かな経験や知識があっても、上手に伝えるには別の能力が必要で、それはなかなか身につくものではありません。
そんな時、熟練したインタビュアーであれば、相手の本当に言いたいことを聞き出し、本質を引き出してみせることができます。コトバコの口述筆記で生まれた文章は、百人百様の魅力にあふれていますが、それを導き出すのはインタビュアーの役割です。